原材料費や光熱費の高騰により、多くの飲食店が値上げを検討せざるを得ない状況に直面しています。
一方で「値上げによる客離れ」への懸念から、価格改定に踏み切れない経営者も少なくありません。
本記事では、飲食店における値上げの必要性とメリット、典型的な失敗例、客離れを最小限に抑える具体的な方法を解説します。
飲食店で値上げが必要になる背景

飲食業界では、原材料費の高騰や人件費の上昇など、コントロールできない要因によって経営が圧迫されるケースが増えています。
利益率の悪化は店舗の持続可能性に直結するため、適切な価格設定の見直しが求められているのが現状です。
以下では、値上げが必要となる主な背景について解説します。
原材料費・光熱費の高騰など、外部コストの上昇
近年、食材の仕入れ価格は継続的に上昇しており、全国の飲食店経営者を悩ませています。
国際的な穀物価格の高騰、円安による輸入コスト増加、異常気象による農作物の不作など、複数の要因が影響を与えているためです。
電気・ガス料金も高騰しており、厨房機器や空調設備を多用する飲食店にとって、光熱費の負担は無視できない水準に達しました。
これらのコストは店舗側でコントロールできないため、経営を維持するには適切なタイミングでの値上げ検討が必要となっています。
人件費・人材確保にかかる負担の増加
飲食業界では慢性的な人手不足が続いており、スタッフの採用・定着にかかるコストが年々増加している状況です。
最低賃金の引き上げも毎年行われており、人件費比率の上昇は多くの店舗で経営を圧迫する課題となっています。
優秀な人材を確保・維持するためには、競合に負けない給与水準と働きやすい環境づくりが不可欠です。
こうした人材投資を継続しながら経営を安定させるには、適正な価格設定が現実的な選択肢となります。
利益率の悪化による経営の持続性への影響
コストが上昇する中で価格を据え置くと、利益率は確実に悪化し、経営基盤が脆弱になります。
利益率の悪化が続けば、最終的には店舗の存続自体が危うくなり、資金繰りの悪化から廃業を余儀なくされるケースも少なくありません。
実際に、一時的な売上維持のために価格を抑え続けた結果、経営体力が尽きて閉店に追い込まれる飲食店も存在します。
持続可能な経営を実現するためには、市場環境を見極めた適切なタイミングでの価格改定が必要です。
値上げによるメリット

飲食店での値上げには客離れのリスクもありますが、適正な利益を確保し、経営を継続・発展させていくうえで重要な判断です。
適正な価格設定により利益率が改善され、その利益を店舗に再投資することで、サービス向上につながる好循環が生まれます。
ここでは、飲食店での値上げがもたらす主なメリットについて解説します。
利益率の改善・経営体力の確保につながる
適正な価格改定を行うことで、原材料費の高騰などで削られていた利益を回復できる点が、値上げによって得られる最大のメリットです。
利益率が改善すれば、手元に残るキャッシュフローが良くなり、将来の不測の事態への備えとなる内部留保を積み増すことができます。
確かな経営体力があれば、市場環境の急激な変化や予期せぬトラブルにも柔軟に対応できるようになり、長期的な経営の安定性を高めることにつながります。
品質維持やサービス改善に再投資できる
値上げによって確保した適正な利益を、より良い食材の仕入れやスタッフの教育研修に活用することで、店舗の総合的な魅力を高めることが可能です。
老朽化した設備の更新や店内環境の改善などに再投資することで、顧客満足度を向上させられる点も重要なメリットといえます。
値上げで得た収益を顧客体験の向上に充てることで、価格以上の価値を提供できれば、結果的に客離れを防ぎ競争力を高める要因にもなります。
過度な割引や無理な価格設定から脱却できる
周辺店舗との低価格競争に巻き込まれていた飲食店にとって、値上げは自店の価値を見直し、適正価格への回帰を図る機会となります。
常にクーポンや割引を期待する価格重視の顧客層から、店舗の品質やサービスを正当に評価してくれる顧客層へと、ターゲットをシフトできる可能性があるのです。
安売りに頼らない本質的な価値提供ができれば、店舗のブランド力の向上にもつながり、スタッフのモチベーション向上も期待できます。
飲食店で値上げすると客離れが起こる理由

飲食店で値上げを実施すれば、ある程度の客離れは避けられないのが現実であり、あらかじめ覚悟しておく必要があります。
ここでは、なぜ顧客が離れてしまうのか、その心理的メカニズムや市場環境を踏まえ、特に飲食店において顧客が離れやすい理由について解説します。
価格に対する心理的抵抗が大きい業種である
飲食店はアパレルや家電などとは異なり、高い頻度で利用されることがあるため、顧客は以前の価格を無意識のうちに記憶しているものです。
そのため、「いつものランチが50円高くなった」といった小さな変化であっても敏感に察知され、損をしたような気分にさせる可能性があります。
特に常連客ほど、以前の価格を基準に価値を判断するため、値上げに対する心理的な抵抗感が強くなる傾向にあります。
値上げの納得感の有無で印象が大きく変わる
同じ金額の値上げであっても、その理由が明確で納得できる場合と、そうでない場合では、顧客の受け止め方が大きく異なります。
「なぜ急に高くなったのか」という背景が分からなければ、顧客は不信感を抱き、「便乗値上げではないか」と疑いの目を持ってしまうかもしれません。
逆に、昨今の社会情勢や品質向上への真摯な努力が伝われば、値上げに対して理解を示し、応援してくれる顧客も多く存在します。
競合との比較で不利になるケースがある
同じエリアに似たような業態の飲食店が複数ある場合、自店だけが値上げを行うと、相対的に価格競争力が低下してしまうリスクがあります。
特に味やサービスに大きな差がない場合、価格を重視する顧客層は、他店と比較して少しでも高いと感じれば、容易に店を変えてしまうでしょう。
独自性やブランド力といった差別化要素が弱い飲食店ほど、他店との比較にさらされやすく、値上げによる客離れの影響を受けやすい傾向にあります。
飲食店で起こりがちな値上げの失敗例

適切な手順を踏んだ値上げであれば理解を得られる可能性は高いですが、方法を誤ると想定以上の客離れを招いてしまう危険性があります。
ここでは、他店の事例から学びリスクを回避するために、飲食店でよくある値上げの失敗例を紹介します。
急激な値上げでお客様に受け入れられない
一度に大幅な価格改定を行うと、顧客の心理的な負担が許容範囲を超えてしまい、拒絶反応を示されてしまうという典型的な失敗例があります。
例えば、これまで800円だったランチを一気に1,000円に上げると、率にして25%もの値上げとなり、顧客へのインパクトは大きなものになります。
このような急激な値上げは、多くの顧客が直感的に「高すぎる」と感じてしまい、結果として客離れを引き起こす原因となります。
特に、何の前触れもなく来店したら急に価格が変わっていたというケースは、顧客に驚きと不信感を与えてしまうため、避けるべき手法です。
説明不足で不満・誤解を招く
事前の告知や丁寧な説明がないまま価格を変更すると、「こっそり値上げした」と受け取られ、強い不信感を招いてしまうという失敗例があります。
最近では「ステルス値上げ」という言葉が広く浸透しており、SNSなどで拡散されて悪評が広まるリスクもあるため、慎重な対応が求められます。
特に、量を減らして価格を維持するような実質的な値上げは、顧客が「騙された」と感じやすく、発覚したときの反発が大きくなってしまうこともあります。
値上げと同時にサービス品質が落ちたように見える
値上げしたにもかかわらず、接客態度が悪かったり料理の盛り付けが雑だったりすると、顧客の不満は一気に高まってしまう可能性があります。
店内が汚れているなどサービス品質が下がったように見えると、「値段は上がったのに質は落ちた」という印象を持たれ、深刻な失敗となる恐れがあります。
値上げ後は顧客の評価基準が以前よりも高くなっているため、これまで以上に品質管理を徹底しなければ、客離れを防ぐことは困難です。
客離れを最小限に抑えながら値上げするためのポイント

飲食店での値上げによる客離れを完全にゼロにすることは難しいかもしれませんが、経営を存続させるためには必要な判断です。
重要なのは、失敗例のようなやり方を避け、顧客の理解と納得を得やすい方法を取ることです。
ここでは、客離れを最小限に抑えながら値上げするための重要なポイントについて解説します。
段階的な値上げで心理的負担を減らす
一度に大幅な値上げをするのではなく、数ヶ月から半年ごとに小刻みに価格を調整する方法が、顧客の心理的抵抗感を和らげるのに効果的です。
例えば、最終的に200円上げる必要がある場合でも、まず100円上げて様子を見るなど、段階的なアプローチを取ることが重要となります。
段階的な値上げなら、各回の心理的なインパクトが小さいため、客離れを抑えることができるでしょう。
この方法は、失敗例でも触れた急激な値上げを避けるための有効な手段であり、リスクをコントロールしやすくなります。
値上げ理由をわかりやすく伝え、納得感を高める
店頭のポスターやSNSなどを活用して、なぜ今値上げが必要なのかを誠実に説明することも効果的です。
「原材料費の高騰に伴い」「スタッフの待遇改善のため」など、具体的かつ正当な理由を明確に示すことで、納得感を高めることができます。
顧客は値上げそのものよりも、説明のない値上げに対して不信感を抱く傾向があるため、丁寧なコミュニケーションが客離れを防ぐ鍵となります。
メニュー改善・サービス向上で値上げ以上の価値を感じてもらう
値上げと同時に、メニューやサービスに何らかの付加価値を提供することが、価格上昇に対する納得感を高めるために重要となります。
食材のグレードアップ、ボリュームの増量、あるいは小さなサイドメニューの追加などが有効であり、具体的な工夫が求められます。
値上げを単なるコスト転嫁ではなく、顧客体験を向上させる機会と捉えることで、長期的なファンを獲得していくことが大切です。
値上げ後の状況把握と改善サイクルが重要

飲食店で値上げを実施したらそこで終わりではなく、その後の継続的なモニタリングと改善が飲食店経営での成功の鍵となります。
ここでは、成功につなげるため、値上げ後に行うべき重要な施策について、3つの観点から解説します。
来店数・客単価・リピート率の変化を見える化する
値上げ前後のデータを詳細に比較し、具体的な影響を感覚ではなく数値で客観的に把握することが重要です。
単純な売上額だけでなく、客単価やリピート率など、複数の指標を活用して多角的に変化を確認する必要があります。
データに基づいて判断することで、現在の価格設定が適切か、あるいは追加の対策が必要かどうかを冷静に見極められるようになります。
値上げ後こそQSC(品質・サービス・清掃)を強化する
値上げ後は、顧客の視線がこれまで以上に厳しくなるため、料理の品質(Quality)、接客サービス(Service)、店内の清掃状態(Cleanliness)を徹底的に強化することが大切です。
QSCチェックツールなどを活用して基準を明確にし、全スタッフで「より良い店にしよう」という意識を共有することが重要となります。
値上げという経営判断をした以上、それに見合うだけの価値を提供し続けることが、客離れを最小限に抑える確実な方法です。
お客様の声・レビューを活かし改善を続ける
店頭でのアンケート、口コミサイトのレビュー、SNSでの反応など、顧客の生の声を積極的に収集も、現在の店舗状況を理解するために重要です。
値上げに対する率直な意見の中には、店舗をより良くするための貴重なヒントや改善の指針が含まれています。
ネガティブな声にも真摯に向き合い、改善できる点は迅速に対応していくことが、顧客との信頼関係を維持するために重要です。
顧客の声に耳を傾ける姿勢こそが、値上げの失敗を回避し、メリットを最大化するために不可欠な要素といえます。
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飲食店での値上げは客離れに繋がる?効果的な値上げ方法とは?|まとめ
飲食店における値上げは、昨今のコスト上昇を考えれば経営を守るために避けられない重要な判断です。
客離れを最小限に抑えるためには、失敗例で挙げたような急激な値上げや説明不足を避け、誠実なアプローチを徹底することが重要となります。
段階的な価格改定の実施と理由の丁寧なコミュニケーション、そして価格以上の価値を提供し続けることが成功の条件です。
本記事の内容を参考に、データ分析による継続的な改善サイクルを回しながら、慎重かつ戦略的に持続可能な経営を目指しましょう。

