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アパレルは利益率が高い?原価計算方法と平均値をEC・実店舗別に紹介

アパレルの経営を考えている方や、すでに店舗を運営しているなかで「自分の店の利益率は適正なのか」と不安を感じている方は多いでしょう。

アパレル業界は利益率が高いと言われる一方で、在庫リスクやセールによる値引きなど、利益を圧迫する要因も少なくありません。

本記事では、アパレルの利益率の計算方法や業界の平均値をEC・実店舗に分けて解説し、利益率を改善するための具体的なポイントも紹介します。

アパレル経営で理解しておきたい利益率の考え方

アパレルショップで働く女性

利益率にはいくつかの種類があり、どの指標を見るかによって経営判断は大きく変わります。

「アパレルは利益率が高い」と言われる場合、多くは粗利益率を指しています。

アパレル経営をこれから始める方や、利益構造に不安を感じている方に向けて、まず押さえておきたい基本的な考え方を紹介します。

粗利益率と営業利益率の違い

そもそも利益率とは、売上に対してどれだけの利益が残るかを示す指標であり、アパレル経営で特に押さえておきたいのが「粗利益率」と「営業利益率」の2つです。

粗利益率とは、売上から仕入れ原価を差し引いた利益の割合を示す指標であり、商品そのものの収益性を把握するために用いられます。

一方で営業利益率とは、粗利益からさらに人件費や家賃などの販管費を差し引いた利益の割合であり、事業全体の収益性を示す指標です。

たとえば粗利益率が50%を超えていても、販管費が大きければ手元に残る利益はわずかになってしまうケースも珍しくありません。

そのため、両者の違いを意識して数値を確認する視点が重要になります。

経営判断で重視すべき指標

アパレル経営では、粗利益率だけでなく営業利益率を定期的にチェックすることが重要であり、両方の指標を把握することで経営の実態が見えてきます。

粗利益率が高くても、人件費や家賃などの固定費負担が重ければ、実際の収益性は低くなる場合があるため注意が必要です。

具体的には「売上高」「粗利益率」「営業利益率」の3つを月次で確認し、前月や前年同月と比較する方法が効果的でしょう。

継続的なモニタリングを行うことで、トレンドの変化や異常値を早期に察知できます。

自社の規模や販売チャネルに合った利益率の目安を設定し、数字をもとに経営判断を下す習慣を身につけることが、安定経営への第一歩です。

アパレルは本当に利益率が高い業界なのか

アパレル販売員の女性

アパレルは「利益率が高い」という印象を持たれやすい業界ですが、実際の経営状況はそれほど単純ではなく、粗利益率と営業利益率の違いを理解することが重要です。

アパレル業界は、商品の原価率が比較的低いため粗利益率は高くなりやすく、一般的に50〜60%前後になるケースが多いとされています。

自社で企画・製造を行うオリジナルブランドであれば、50〜70%程度になる場合もあります。

しかし、粗利益率の高さがそのまま手元に残る利益を意味するわけではありません。

アパレルではシーズンごとに商品が入れ替わるため、売れ残りによる値引き販売や在庫処分、廃棄コストなどが発生しやすいという特徴があります。

その結果として営業利益率はそれほど高くなく、数%台にとどまる企業が多いとされています。

経済産業省の企業活動基本調査でも、繊維・衣服関連企業の利益率は数%台の水準で推移しており、粗利益率の高さに比べて最終的な収益率は決して高いとはいえません。

このように、表面的な粗利益率だけで判断せず、営業利益率まで含めて経営実態を把握することが、アパレルビジネスを理解するうえで重要といえるでしょう。

アパレルの原価とコスト構造

アパレルショップで書類を書く女性

アパレルの利益率を正しく理解するためには、原価がどの部分で発生しているのかを正確に把握しておく必要があります。

ここでは、アパレル経営で発生する主なコストを商品原価と固定費の2つに分けて整理していきます。

商品原価とアパレル特有のコスト

商品原価には、素材費・縫製費・副資材費(ボタンやファスナーなど)が含まれています。

海外生産の場合は輸送費や関税も加わるため、生産地によって原価が変動するのが特徴です。

さらにアパレルは季節商材という特性を持っているため、シーズンを過ぎた在庫はセールで値引き販売するのが一般的です。

売れ残った商品には廃棄費用や倉庫保管料も上乗せされるため、在庫管理の精度が利益に直結することを理解しておく必要があります。

こうした在庫関連コストは、最終的に利益を圧迫する大きな要因となるため、仕入れの段階から販売計画を綿密に立てて過剰在庫を防ぐ工夫が欠かせません。

固定費(人件費・家賃・販促費)

実店舗では、店舗家賃やスタッフの人件費に加えて光熱費や内装維持費なども発生するため、毎月の固定費が大きな負担になりがちです。

ECでもサイト運営費や広告宣伝費、物流コストが必要となります。

いずれの業態であっても、固定費の管理が利益率を左右する重要な要素であることは変わりません。

売上が伸び悩む月でも固定費は一定額が発生するということを念頭に、毎月のコストバランスを意識した経営判断が求められます。

アパレルの利益率の計算方法

電卓で計算する女性性

利益率の考え方や原価の内訳を把握したところで、具体的な計算方法を正しく押さえておきましょう。

自社の収益力を客観的に評価するためには、曖昧な感覚ではなく、正確な数値を導き出すプロセスが不可欠です。

ここではアパレル経営で使われる粗利益率と営業利益率の基本的な計算式に加えて、算出時に注意すべきポイントについても解説します。

粗利益率の計算方法

粗利益率の計算式は以下のとおりです。

粗利益率(%)=(売上高 − 売上原価)÷ 売上高 × 100

たとえば1着5,000円の商品を仕入れ原価2,000円で販売した場合、売上高から原価を引いた3,000円が粗利益となり、粗利益率は60%です。

営業利益率の計算方法

営業利益率の計算式は以下のとおりです。

営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

たとえば月間売上300万円、仕入れ原価120万円、販管費150万円の場合、営業利益は30万円となり、営業利益率は10%となります。

アパレル業界ではこの2つの計算式を使い分けながら、自店舗の収益性を定期的に確認することが、正しい経営判断につながります。

計算時の注意点

利益率を算出する際に最も見落としやすいのが、セールによる値引きをどのように扱うかという点であり、ここを誤ると正確な数値が把握できません。

計算時には定価ではなく、値引き分を反映した「実売上」をベースに算出することが重要です。定価ベースで計算すると実態より高い利益率が出てしまうため、注意が必要です。

その結果として経営判断を誤るリスクが生まれるため、必ず実際の販売価格で計算する習慣を身につけておくことが大切です。

また、在庫の廃棄コストや倉庫保管料など、仕入れ原価には含まれにくい費用も加味したうえで利益率を把握することが、正確な経営分析の土台となります。

アパレル利益率の平均と目安

アパレルショップで働く男性

計算方法を把握したところで、アパレル業界における利益率の平均値を確認しておきましょう。

業界水準に照らし合わせることは、自店舗の数値が適正かどうかを客観的に判断する重要なステップとなります。

業界平均と自社基準の考え方

アパレル業界全体の粗利益率は、一般的に50〜60%程度が平均的な水準とされており、食品や日用品と比較すると高い傾向にあります。

一方で営業利益率については、上場企業の平均で2.2%程度、中小規模の事業者でも5〜10%程度が現実的な水準となっています。

ただし業界の平均値はあくまでも目安にすぎず、すべての店舗に当てはまるわけではないことを理解しておく必要があります。

大量仕入れが可能な大手チェーンと独自性を重視する個人経営のセレクトショップでは、仕入れ条件や販管費の構造が根本から異なります。

業界全体の数字を鵜呑みにするのではなく、自社の規模や業態に近い事例を参考にすることが、より実践的な考え方です。

収益性の高さを測る判断基準

一般的に、粗利益率が50%を超えていれば「利益率が高い」と評価される傾向にあり、アパレル業界ではこの水準が一つの目安となっています。

営業利益率については、中小規模の事業者であれば5〜10%を超えていれば健全な経営状態と判断されることが多く、安定した収益基盤が構築できていると評価できるでしょう。

逆に、営業利益率が5%を下回っている場合はコスト構造に課題がある可能性が高く、早急な見直しが必要な段階といえます。

具体的には、仕入れ条件の交渉や家賃・人件費などの固定費削減、在庫回転率の改善といった観点から原因を特定することが重要です。

数値の低下を放置すると資金繰りが悪化し、事業継続が困難になるリスクもあるため、低下傾向が見られる場合は早めに対策を講じることが大切です。

ECと実店舗で異なる利益率の特徴

アパレルショップで働く女性

アパレルの利益率はEC運営と実店舗運営でコスト構造が大きく異なるため、それぞれの特徴を正しく理解しておくことが重要です。

ここでは両者の違いを整理したうえで、自社に合った販売チャネルの選び方について解説します。

ECアパレルの利益率の特徴

ECアパレルは店舗家賃が不要な分、固定費を抑えやすく、粗利益率の平均は54.9%と実店舗よりもやや高い水準にあります。

(参考:ネットショップ担当者フォーラム2019年

ただし、ECモールへの出店手数料や配送料、商品撮影コスト、広告宣伝費が主な支出項目として発生するため、営業利益率は10%前後に収まることが多いのが実情です。

また、ECでは価格比較が容易な分、競合との価格競争に巻き込まれやすい傾向にあります。

値引きやクーポン施策の頻度が増えると実質的な販売単価が下がり、粗利益率が低下する要因になる点も課題です。

実店舗アパレルの利益率の特徴

実店舗では店舗家賃とスタッフの人件費が最大のコスト項目となっており、都心部の好立地ほど固定費比率が高くなりやすい構造にあります。

粗利益率は一般的に50〜60%程度が平均で、営業利益率は5〜10%程度が現実的な水準となっています。

そのため、売上が伸び悩む月でも固定費が一定額発生する点には、特に注意が必要です。

一方で実店舗には接客による購買単価の向上や返品率の低さという独自の利点があり、近年はECと実店舗を併用してそれぞれの強みを活かす運営スタイルも注目を集めています。

目指すべき利益率と改善の考え方

アパレルショップで働く女性

業界平均やEC・実店舗の違いを理解したうえで、最後に考えるべきなのが「自店舗ではどの程度の利益率を目指すべきか」という目標設定です。

ここでは現実的な目標の立て方と、利益率を改善するための具体的なポイントについて解説します。

小規模事業者の現実的な目標

創業期のアパレル経営では、まず営業利益率5%以上を安定的に確保することが現実的な目標となります。

この段階では、高い利益率を追うことよりも黒字の状態を維持することを最優先に考えましょう。

知名度やリピーターが不十分な時期は、広告費などの先行投資がかさむため、無理に高い利益率を追わず、着実に収益基盤を固めることを意識する必要があります。

利益率は一気に改善するものではありません。
月ごとの数値を丁寧に追いかけ、少しずつ向上させていく地道な積み重ねこそが、長期的な経営の安定へとつながります。

利益率を見直すポイント

利益率を改善するには、売上を伸ばすだけでなくコスト構造を見直す視点が欠かせません。

在庫管理の精度を高めてセール値引きの頻度を抑えることや、定価販売率を上げるための工夫を組み合わせていくことが有効です。

さらに、利益率を定期的に計算して推移を確認する習慣を持つことが重要です。

月次で粗利益率と営業利益率をチェックし、感覚ではなく数字をもとに判断することが、安定した経営を実現するための基盤になります。

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アパレルは利益率が高い?ECと実店舗の違い|まとめ

アパレルの利益率は、粗利益率で見ると50〜60%程度と他業界よりも高い水準にあります。

しかし、在庫リスクやセール値引き、固定費の負担を考慮した営業利益率で見ると、決して楽に利益が残る業界とは言い切れません。

EC・実店舗それぞれの利益構造の違いを理解し、自社の事業形態に合った計算方法で定期的に数値を確認することが、安定した経営の第一歩になります。

まずは自店舗の利益率を正しく計算し、業界の平均と比較するところから取り組んでいくことが大切です。

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