市場背景
生産年齢人口の減少や長時間労働が社会問題となる中、生産性向上や長時間労働の是正を目的として2018年6月に働き方改革関連法が制定されました。この法律により、2019年4月から大企業に、2020年4月からは中小企業に対して関連法が施行されました。
法改正により、企業は「有給休暇年5日取得の義務化」や「勤務間インターバル制度の導入に向けた努力義務」、「残業時間上限規制の導入」などが求められています。
また、労働安全衛生法の改正により、労働者の健康管理のために「勤務時間の客観的な記録の取得」が必要とされています。
客観的な記録の取得方法は、2017年1月20日に改定された厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など」と明記されており、ICカードを利用した就業管理システムの導入が注目されています。
さらに、これまで運送業界/建設業界/医療業界への時間外労働の上限規制の適用が猶予されてきましたが、2024年4月1日からこれらの業種も規制の適用が始まり、幅広い業種に向けた就業管理システムの導入が拡大していくとされています。
これらの法改正への対応のためには労働時間をリアルタイムに把握し、従業員への注意喚起や健康状態への影響を配慮する必要なため、紙のタイムカードによる時間管理ではリアルタイム性、システムへの入力負荷の観点から対応が難しくなる場合が増えていることも勤怠管理システム導入の背景となっています。
勤怠管理システムにはICカードを利用するものだけではなくPCの使用時間の管理、モバイルのGPSと連動する方法や、バイオメトリクスを利用する方法まで多様なソリューションが提案されています。
ICカードを使った打刻ソリューションはカードコストが下がっていること、PCが不要なこと、打刻スピードが速く実運用に合理的であることから多くの企業で採用が進んでいます。
プレーヤーの参加者分類
勤怠管理システムの市場では大きく分類して3つのソリューションプレーヤが勤怠管理システムを提供しています。ひとつは大企業の専用システムを開発する独自システム開発者や大企業のシステム子会社、次に汎用ERPパッケージを提供するソリューションベンダ、最後に汎用的なシステムを実現するための勤怠管理クラウドベンダです。
特にクラウドベンダ市場では、中小企業の低価格志向に対応するため一人あたり数百円程度のコストでソリューションの利用が可能です。
いずれのソリューションベンダにおいても打刻運用における要望は等しく、正確でコストが低く利便性の高い打刻手段を提案しています。
ハードウェアの位置づけ(打刻手法)
勤怠管理における打刻方法には大きく分けて下のような方式が普及しています。
旧来の紙によるタイムカード打刻機
従来から利用されてきた紙によるタイムカード打刻機は利用のしやすさ、導入コストの低さから現在でも多くの企業で採用されています。
しかしながら法対応のためには労働時間をリアルタイムに把握し、従業員への注意喚起や健康状態への影響を配慮する必要なため、紙のタイムカードによる時間管理ではリアルタイム性、システムへの入力負荷の観点から対応が難しく、人事システムへの打刻情報の投入業務が人事担当者の大きな負担となりつつあります。
PC、モバイルの画面から打刻を行う方法
近年増えている方法として社内業務アプリケーションや、勤怠管理クラウドサービスが提供する勤怠管理サービスに出退勤時刻を入力する(あるいは、出退勤ボタンを操作する)勤怠管理ソリューションを利用する企業が増えています。
このソリューションはオフィスに特別なハードウェアが不用で導入のハードルが低く、安価で簡単な方法として多くの企業で利用されています。
この方法の課題は、PCやモバイルの可搬性と操作の容易さゆえに生じる打刻データの信頼性と運用性にあります。アクセスネットワークを認証していない場合社員が本当に出社しているかどうか判別できない場合があったり、簡単に記録、修正できることによる安心感から正しいタイミングで時刻入力をせず、まとめて事後に入力するようなケースが生じる場合がある点です。
2017年に改定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」では”労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置”の例から”パソコン入力等”の記載が削除されたため、この方式が「客観的な記録」と認識されるためには”パソコンの使用時間の記録等”の補完的な監査情報を求められる場合があります。
バイオメトリクスを利用する方法
バイオメトリクス(静脈、指紋、顔認識等)技術を利用した勤怠管理サービスは、その厳密な本人確認性からセキュリティ意識の高い企業、公共団体での採用が始まっています。認証用の端末コストも低下傾向にありPCのログイン認証用途と併用で利用されるケースも増えています。また、ICカード方式のようにカードを持ち歩く必要もないことから利便性の面でも評価が高いシステムとなっています。
課題は認識率、速度、設置環境、ならびに、セキュリティです。バイオメトリクス認証の認識精度は年々高まっており認証対象の個人が予め分かっている場合にその本人性を確認精度は非常に高まっていますが、事前に認証対象個人を特定できていない状態でバイオメトリクスデータだけで個人を識別する場合の認識率は相対的に低くなります。また、方式によっては誰もが利用できるものではなく他の方法を併用する必要がある場合もあります。勤怠管理としてバイオメトリクス認証を用いる場合の運用上の課題は一人を識別するのに時間がかかる点です。例えば入り口に1台の認証機を設置している場合、始業時間ぎりぎりに駆け込む社員の行列ができる例もあります。
なお、バイオメトリクス情報は非常に機微な個人情報であるためデータの保全には高いセキュリティ要件が求められ、また、個人情報を事前登録する際の社員の精神的な抵抗感への配慮も必要となります。
非接触ICカードを利用する方法
非接触ICカードによる打刻はユーザの操作性、速度、場所の特定、および、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」への適応といったコンプライアンス上の観点から近年多くの企業が導入を進めています。カードをかざす操作は交通機関における改札や扉開閉のセキュリティのICカード化に伴い社員の操作に対する理解も早く説明が不用です。以前はICカードの発行コストが高価であるという課題がありましたが、現在ではICカードの発行コストも下がり導入の障壁が低くなりつつあります。
また、ICカード化された社員証により就業時間の管理だけではなく、ERPシステムとの連携による生産性管理、工数管理等を統合的に行う企業も増えICカード導入の付加価値が向上しています。
この方式の課題は打刻端末の価格でした。これまで非接触ICカードのリーダは20万円以上のものが一般的で、複数の拠点で採用する場合には端末のコスト、および、設置のための工事、保守費用の総額が非常に高価になるという課題がありました。
最近では安価な勤怠管理用のICカードリーダが登場しており、この課題は解決されつつあります。
ピットタッチシリーズの優位性
ピットタッチシリーズはこれまでの非接触ICカードリーダ打刻機に比べ比較的安価でありネットワーク対応の独立型非接触ICカードリーダのため設置コストも不用である点が評価され、多くのソリューションベンダに採用されています。
機器にネットワーク情報を事前設定すれば、設置場所でケーブルを接続するだけで利用できることから設置業務コストや、設置期間を大幅に削減できます。例えば全国数百箇所の事務所を持つ企業の例では、事前に設定した端末を設置箇所へ郵送しケーブル接続するだけで利用できたことにより導入期間は一ヶ月程度で完了した実績があります。
また、ピットタッチプロはUSBポートに無線LANアダプタや、モバイル通信モジュールを接続することでワイヤレスでの利用も可能です。
ピットタッチシリーズはサーバとの通信に標準のインターネットプロトコルであるHTTP/HTTPSを採用しており、サーバ側の実装も一般的なWeb技術者であれば簡単に開発することが可能です。
その他にも多くの実績を基に非ネットワーク環境での利用や、通信が不安定な場所での再送機能等タイムレコーダとして必要な機能を搭載しています。